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井上 洋介 / YOUSUKE INOUE

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​井上陽介建築研究所

一級建築士 建設大臣登録 第263819号

建築士事務所登録 東京都知事 第46395号

 

AIJ 日本建築学会 会員

1966年 東京都生まれ

1991年 京都大学工学部建築学科 卒業

1991年 株式会社坂倉建築研究所 入社 

2000年 同事務所 退社

2000年 井上洋介建築研究所 設立

■住宅についての考え方
・空間と光について  
太陽の光が意識され、その存在、自然の時間の変化が刻一刻と感じられるような空間を作りたいと考えています。
・空間と素材について
あまりたくさんの素材を使わず、限られた素材を正直な使い方で空間を組み立てていきたいと考えています。 コンクリートであろうが、鉄や、木であろうが、素材そのものを生かしながら、表裏なく、むしろ素材をはっきり強調するような方向で扱っていきたいと考えています。 
・空間と生活について 
中で生活する人が、静かに生活できる場所をつくりたいと考えています。さまざまな情報が氾濫し、スピードの加速する今の時代のなかで、ゆったりとした時間を取り戻すことに、 ものづくり の立場から貢献することができればいいと思っています。

Works

下北沢の家

建主から渡された1枚のメモが手元にある。

「100年たっても色あせない」
「風が抜ける家」

建物は、人に愛され、長く使われ、静かにその土地になじんでいくことができれば、それが本望なことなのだろうと僕は思う。

ギャラリーのように住みたい、とも言われた。クライアントは実に個性的な住まいかたをしていた。世界各地で手に入れたアート、家具、雑貨、書籍など、モダンなものからプリミティブなもの、ジャンクなものまで、家じゅうがたくさんのモノであふれていて、生き生きとした日々の活動が伝わってきた。

住宅をつくる、ということは、器をつくることに似ていると思う。
日々の生活が主で、建築はあくまでその背景。生活に寄り添うものでありながら、より彩りを与えられるような存在。個性的なモノたちに負けない、力強く存在するような建築をつくりたいと思った。

コンクリートの壁を建てる。
壁の間には隙間を開け、そこが開口となる。壁から壁へ、鉄骨の長い梁が架け渡され、その上に木の梁を並べて床と屋根を組む。単純な考えかたでありながらも、できるだけそれらの部材がそのまま意匠として現れるような構造にしたいと思った。

なぜ壁をコンクリートでつくったのか、説明するのは難しい。しいていえば、生活をしっかりと守ってくれているという安心感をそこに感じるからだろうか。ゆるぎない壁が、欲しかったのだろう。

​裾野の家

コンクリートと木との混構造でつくりたいというのが第一の要望であった。

​駅前の再開発に伴い、元々実家があった場所に建てるとのこと。姉弟の母親が高齢で、同居しながらの生活、行事の際には親族の集まる場所になることから、一つの大きな屋根の平屋をベースにした。お姉さんが古民家の建具や水屋箪笥を使いたいということもあり、時代を重ねてここに建ち続けられるよう、混構造でつくられた民家をイメージした。

屋根は一様に架けるのではなく、水廻りや客間を、中心となる居間・食堂から下屋のように張り出たせ、それぞれの方向に高さの異なる屋根を架けた構成とした。

建主が建設関係の仕事をしており、親族にも材木屋がいるということから、型枠の材料は建主側で用意された。ウッドショックの真っ只中、たまたま用意しやすい材が幅180㎜、圧18㎜という、型枠に使うには立派な材であった。2層部分のボリュームは縦貼りに、1層部分は横貼り裏貼り無しとした。型枠をもう一度使えないかという話になり、建主が自ら材を洗って2層目のコンクリートにも使用した。杉板を転用するのは初めてのことでもあったが、結果的に3回目は塀のコンクリートでも使い、今は自社の仮説材料としてストックしているという。手に入る材料でつくり、その材料を使い切り、設計者が意図しきれないところで意匠が決まる。一つひとつ現場と対話しながら、手作業でつくっているからこその出会いだと思う。

幅広の型枠で出来たコンクリートは、古民具に負けない存在感を放っており、さらに造園の長崎さんが、小松石の巨石や現場から出た石をふんだんに使った庭をまとめてくれて、駅前でひときわ力強い佇まいを見せている。

船橋 梨園の家

千葉県船橋市で梨園を営んでいる、親子2世帯・3世代のための住まいである。
初めて敷地を訪れたときの、母屋の立派な佇まいが今でも印象に残っている。

建て主からの要望は、既存の母屋を残しつつ、住宅を新築したいというもの。

敷地を訪れた時点で、シンプルな切妻屋根の平屋の住宅というイメージを思い描いていた。一家のための新しい住宅は、母屋よりも主張しないように高さを抑えた平屋とし、屋根は、母屋の立派な瓦屋根との調和をはかり、瓦で葺く。母屋に対して、東西に長いボリュームでL型に配置し、庭を囲む構成とする。これが、今回の設計の基本的な考え方であった。

東西に長い平面は、リビングを中心に、親世帯と子世帯に分かれ、2つの世帯が同居しながら、ゆるやかに生活空間を仕切っている。
構造は、コンクリートと木の混構造。部屋のまとまりごとに、南北にコンクリートの壁を配置し、梁を井桁(いげた)に組み、登り梁を架けた。壁に仕切られながらも住宅全体が1つ屋根の下、小屋組みが連続する、1つの大きな空間の創出をめざした。
素材は、架構を構成するコンクリートと木、屋根には母屋と同じ瓦を用いた。かつての庭の記憶を引き継ぐために、庭石として数多く残されていた自然石を壁と基礎との間に据えた。

時間とともに都市化が進む都市近郊の田園風景のなかで、伝統をいかに引き継ぎながら、土地に根差した新しい住まいをつくることができるか。この住宅のテーマはそこにある。

 

用賀の離れ

10年前に自宅を設計した建主から連絡があり、隣の土地を入手したという。地主の持つ立派な竹林が控えるその土地は、自宅を建てた時から気になっていたそうだ。

建主からは自邸の5年ほど前にも別荘を依頼されており、今回は3軒目。今までの2軒とは違う、そして今まで以上のものをつくれるのか、プレッシャーのなかでのスタートだった。

自邸も別荘もあるなかで何をつくるのか。結果として趣味の麻雀ルームとゴルフルーム、そして親族が泊まれる客室としての和室が主な用途となった。

建主が何より大事にしたのは、奥へと続く地主の竹林を借景に取り込み、緑の景色を庭に連続させること。個室は既存の母家のボリュームと繋がるように北側にまとめ、フレキシブルに使える和室を中心に置いた・夕日が見える位置に浴室。母家からの景色を邪魔しないよう切妻屋根の平屋に・・・と進めていくなかで、自ずと和風の意匠へとまとまっていった。

民家のようにどっしりとしながら、数寄屋まではいかずとも凛とした空気が出るような、それでいて昔ながらの旅館のようにくつろぐような、そんな和室をつくりたいと思った。

庭も出来、母家とようやく繋がった姿を見ると、自分の方が先に建っていたかのように離れが佇んでいた。そう思えたことがうれしかった。縁側に座って庭を見るたびに、日がなここでぼーっとしていたいようなおだやかな気持ちになれる。3軒目ということもあり、檜風呂を入れたり和室に炉を切る提案を受け入れてくれたりと、遊び心を持って我々の設計に乗っかり、愛着をもって使いこなしてくれていることに感謝している。
 

吉祥寺の家

敷地は2つのT字路が交差する角地であり、緑の多い閑静な住宅地の一角にありながら、人や車の往来が思いのほか多い。コンクリートの壁で生活の場をしっかりと守りながらも、緑豊かな周辺環境に相応しい住まいのあり方を考えた。

敷地の方位が振れているため、平面は隅切りした南北の角に庭を、道路が交差する角には駐車場を配置した。その結果変形した六角形のプランとなり、中央に階段と吹抜けを据えて渦巻きのような動線とした。玄関を折れ曲がって抜けるとその先には緑の庭が見え、上階では階段を軸に視線が変化する。吹抜けを囲むように、居間、食堂、寝室と、それぞれの生活の居場所を確保した。

​周囲との関わりから生まれた六角形のプランは、結果として街に対して彫刻的な建ち方となった。その外観に対してコンクリートの何らかの表情を試みようと意図しており、最終的には厚さと幅の異なる貫板と瓦桟を6種類組み合わせ、板同士の間に異なる幅の隙間(目地)をとった型枠とした。隙間からこぼれ出たコンクリートがバリとなって表面に現れる。結果、場所ごとに型枠や目地の跡が異なる、自然に近い表情が生まれたのではないかと思っている。

葉山の別荘

「海に向かって開かれた切妻屋根」
この別荘は葉山の海を見下ろす山の斜面に建っている。建物は鉄筋コンクリート造の基礎の上に、木造の切妻屋根がのり、敷地境界に沿った細長い平面形が端部で海に向かって角度を振って配置されている。

上階は、三角天井が伸びやかに続くワンルームで、エントランスからダイニング、リビングまでオープンにつながる大空間。リビングの先には海を一望する広いテラスがつながっている。下階は斜面の高低差を利用して居室がレベル差を伴いながら配置され、奥にテラスに面した浴室がある。下階のテラスは夏には風呂上りにサンセットを眺めたり、夕涼みをしたりすることができるようゆとりをもって作られ、直接、階段またはすべり台で庭に下りることができるようになっている。

内部の仕上げは、床はナラ材のフローリング、壁と天井は砂漆喰で、一部木が張られている。キッチンや洗面カウンターなどのカウンター材は人造石研ぎ出しで作り、グレーイッシュなシックな質感を作り出している。 
海を一望するダイナミックな眺望にめぐまれながらも、内部は落ち着いた静かな雰囲気が全体に渡って感じられるようにしたいと思いながら設計を重ねた。

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